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社内ハラスメントを撲滅させる力

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ハラスメントを許さない社会

「そこをなんとか」という依頼が許される日本の社会。それとは正反対に、アメリカの社会では、「できることと、できないこと」、「していいことと、してはいけないこと」の白黒を明確にさせるから、「そこをなんとか」はない。この曖昧さのない点がアメリカ社会の強さと言える。曖昧さがない考え方を生み出した背景には、差別撤廃時代を通して強化されてきた厳格な法律社会がある。悪事があれば、なにが原因でそうなったかを最後まで突きとめ、その元凶となったものを潰す。ハラスメント訴訟となれば、その元になる多くは差別から発生していることなので、法律が徹底的に叩く。誰が悪いのか、なにが悪いのかを突きとめ判決をくだすことになる。

 

ハラスメントの定義

人を不愉快な気持ちにさせる行為は許されるべきではない。それは、当然のことではあるものの、不愉快な思いをさせられても、それを解決できるシステムがなければ、我慢しなければならない。多くの場合、不愉快な思いをさせられたとき、強者は反撃できるが、弱者は反撃できず、我慢を強いられることになる。この理不尽な状況を打破するため、アメリカ社会は法律を強化し、弱者が強者と戦えるようにした。

 

ハラスメントの具体例

“不愉快な思いをさせられたときが、ハラスメントを受けたとき”。これが定義だから、世の中は、ハラスメントだらけと言える。体重が増えてきたことを気にしている人が、体重の話をされたら、不愉快になるかもしれない。もっと高級な地域に暮らしたいと思っている人が、「どこに住んでいるの?」と聞かれたら、不愉快になるかもしれない。以前に働いていた会社を恥ずかしいと思っている人が、「前はどこで働いていたの?」と聞かれたら、不愉快になるかもしれない。歳を取ることを嫌っている人が、「何歳ですか?」と聞かれたら、不愉快になるかもしれない。

もちろん、裁判で、「それで不愉快になったのは、あなたが過敏すぎるためであり、ハラスメントには相当しない」という判決が下されることもある。だが、判決を下すのは裁判であり、自分ではないのだから、“このぐらいは大丈夫だろう”という勝手な判断をしてはならない。この点をしっかり理解し、「君子危うきに近寄らず」の姿勢を保ち、危険と思われる言動は自制する。その能力がなければ、アメリカ社会では、出世は考えられない。一度でも訴訟され免職となれば、経歴にまとわりつくことになり、人生を左右されることになるからだ。

 

相談という選択はない

ハラスメントを受けた者は恨みを抱く。恨みを晴らすのに、容赦はしない。我慢できなくなったスタッフが上司に「ハラスメントを受けています」などと相談して解決を求めることはまずない。ハラスメントを許した会社組織に恨みを持ち、会社を訴えるのが常套手段。また、会社を訴えなければ、大きなお金を取ることができないという理由も存在する。会社を相手取って訴訟を起こすために駆け込む政府機関がある。また、大企業を相手に訴訟する場合は、成功報酬で引き受けてくれる弁護士もいる。弁護士が入る場合には、多くの場合、途中で示談となり、会社は巨額の示談金を払う結果になることが多い。訴えを起こす側は、負ければ、傷となり、再就職が難しくなることもあるので、これで生涯働かなくても暮らしていけるだけの額を取る覚悟で挑んでくることも多い。

 

ハラスメント素質を持ったスタッフを追放するシステム

ハラスメント訴訟が起きた場合、“ハラスメントを阻止する体制が弱かったから、起きた不祥事”という論理が成立するので、責任は会社にかかってくる。それゆえ、会社は必至になって、ハラスメントを阻止する体制をしいている。この指揮をとるのが、“ヒューマンリーソーシーズ”と呼ばれる部署。この部が、年に数回は全社員を対象としたアンケート調査などを行い、ハラスメントを受けているスタッフの存在を調べる。そして、芽を見つけたなら、すぐに解決に向かって動く。我慢できなくなったスタッフが訴訟を起こす前に、解決しなければ、会社が大損害を受けることになるからだ。それゆえ、アメリカの企業では、ヒューマンリーソーシーズがとても大切な役割を担っている。

アンケート調査には、名前を求める欄はないが、勤続年数、所属部署、性別などは書く欄があるので、ある程度、誰のものか判断できる。不満を持っているスタッフがいれば、面接をして、解決に向けて動く。また、上司へのネガティブコメントが複数のスタッフから挙がっている場合には、聞き込み調査をし、危険人物と判明した場合は、その上司は排除されることになる。

 

ヒューマンリーソーシーズの本来の役割

訴訟から会社を守るために、ヒューマンリーソーシーズは動いている。だが、その本来の目的は、スタッフが快適な環境で仕事ができるようにすることにある。不満を抱えた人が、その会社のために良い仕事をするはずはなく、また、長く働くこともない。多くの人々が働く組織では、たまたま一人だけが不満を持っただけということは考えづらい。一人がいれば、他にもいると考える。ハラスメントはシステムを構築して阻止していかなくては、撲滅できないこととして捉えられている。

 

アメリカに学ぶ転職活動の心得

会社に不満を持っているスタッフと、愛社精神を持っているスタッフ、どちらが会社のためによく仕事をするかは言うまでもない。それゆえ、スタッフが社内で快適な時間を過ごせるようにすることが、生産性をあげることにつながると、アメリカ企業は考える。それには、社内でのハラスメントは言語道断。だが、たとえハラスメント訴訟が頻繁に起こらない社会であったとしても、この考え方がある限り、同じように、スタッフが快適に過ごせるためのシステムを造りあげ、不満を防ぐ努力は怠らなかったに違いない。

こうしたことは人間の本能に由来することなので、世界共通とも言えること。にも拘わらず、アメリカ社会とは、ほど遠い状態にある発展途上国がある。日本で言えば、企業によってまちまちなので、発展途上企業と呼ぶのがふさわしいだろう。発展途上企業で働くより、先進企業で働いたほうが、日々の生活を豊かにでき、将来の展望も広くなる可能性が高い。会社選びをする際には、よく調査を行い、発展途上企業とわかれば、志願するのは避けておくべきだ。

次回は、アメリカの企業が生産性をあげるために、適材適所に基づいた採用を徹底している点について述べてみたい。

 

プロフィール

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ケニー・奥谷(ケニー・おくたに)

インターナショナル・ホスピタリティー・スペシャリスト

経歴・実績

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ・アジア地区セールスオフィスに入社。

1989年からシンガポールのウエスティン、1991年からサイパンのハイアット、そして1994年から2005年まで世界屈指の名門ホテル、NYのプラザホテルにてアジア地区営業部長を務めた。2001年EB1(Person of Extraordinary Ability)カテゴリーに認定され永住権を取得。

2005年プラザホテルの閉館を機にホテル勤務に終止符を打ち、NYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動を開始。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。

著書に「世界最高のホテル・プラザでの10年間」、「海外旅行が変わるホテルの常識」、「サービス発展途上国日本」、「なぜお客様は神様では一流と呼ばれないのか」、「超一流の働き方」などがある。

運営サイト

アメリカ社会で起きている就労実態

第1回 アメリカ社会におけるレイオフと再就職
午前10時にオフィスに戻ると、泣いている同僚がいた。「どうした」と尋ねたら、「レイオフにあったの。今日で、みんなとお別れよ」という。こんなことが、私が働いていたニューヨークの職場ではよく起きた。

第2回 短時間労働で高給を可能にするシステム
アメリカのサラリーマンの一般的な生活は18時前にはオフィスを出て帰宅し夕食を摂る。そして早めに床につき6〜8時間の睡眠をとる。多くの日本人に、「なぜこのような生活が可能なんだ?」と言われるかもしれない。

第3回 アメリカ社会で成功する人の処世術
アメリカで育った人の多くはとても自分勝手な性格をしている。何よりも自分が優先。自分の意に反した決まりは守らない。という態度で生きている。それゆえ、人と人との衝突も多く、世の中は訴訟社会にならざるを得ない。

第4回 レイオフにあったときの対処法
レイオフは突然言い渡される。大概、朝の10時前に呼び出され、「あなたの仕事は今日で最後になります。5時に荷物をまとめて持って帰ってください」と告げられる。このような調子なので、誰もがショックを受ける。

第5回 社内ハラスメントを撲滅させる力
「そこをなんとか」という依頼が許される日本の社会。それとは正反対に、アメリカの社会では、「できることと、できないこと」、「していいことと、してはいけないこと」の白黒を明確にさせるから、「そこをなんとか」はない。

第6回 適材適所に基づいた就活しかないアメリカ社会
アメリカの社会を形成した最も大きな要素は差別との戦いだった、と言っても過言ではない。「差別をする人々に負けられない!」という強い心が、アメリカの競争社会を作り上げる大きな原動力のひとつになってきた。

第7回 働きながら技能資格を追う人々
アメリカ人に年齢を聞いてはいけない。それなりの仲ならよいが、そうでない場合は、二度と口をきいてもらえなくなるかもしれない。学生時代に、アメリカに暮らす友人とデイスコに遊びに行っときのこと・・・

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