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短時間労働で高給を可能にするシステム

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アメリカ企業で働くサラリーマンの日々

アメリカで、サラリーマンとして働く人々の一般的な生活は、年に1~2回、2週間程度のバケーションを楽しむ。夜は6時前にオフィスを出て帰宅してからご飯を食べる。早めに床に入り6時間から8時間の睡眠をとる。週末は、スポーツ、買い物、ドライブ、趣味、ボランティア活動などをして充実した時間を過ごす。

多くの日本人に、「なぜこのような生活が可能なんだ?」と言われるかもしれない。こうした生活を可能にしている大きな要素は2つある。ひとつは、日々の労働時間が長くないこと。もうひとつは給与が高いこと。こう言うと、うらやましく思われるかもしれないが、彼らの生活を分析してみると、必ずしも“うらやましい”とは言えない点もあることがわかる。

 

実はアメリカの方が長い労働時間

まず、労働時間に関して言えば、彼らの年間平均労働時間は日本人より長い。アメリカ人の年平均労働時間が1780時間に対し、日本人のそれは1710時間(OECD調査による)。にもかかわらず、アメリカ人の1日あたりの労働時間が短くなる理由は休日が少ないことにある。

アメリカの休日は年間10日(州により1~2日の違いがある)。日本の休日は17日。それにお盆休暇と年末年始休暇が加わると、23日程度にもなり、アメリカよりも13日も休みが多いことになる。これが、日本人の年間労働日数を短くし、1日あたりの労働時間を長くしてしまう。(アメリカの年間労働日数=250日、1780時間÷250日=7.12時間:日本の年間労働日数=237日、1710時間÷237日=7.21時間)。

とは言え、1日あたりの労働時間の差は0.09時間(=5.4分)にすぎない。にもかかわらず、日本のサラリーマンが長時間労働に苦しむといわれる現象は、明確に測れない残業時間の圧倒的な差によって引き起こされている。

 

制限付きの有給休暇

有給休暇を利用して長期バケーションを楽しむアメリカ人の生活は優雅に見えるかもしれない。だが、このバケーションは、ほどんどの企業で、年間スケジュールとして組まれるため、勝手に変更ができないという制限がつく。大概、夏の終わりに、来年度の有給休暇スケジュールの提出を求められる。複数もの人が同時期に休まれると困るので、重なっているときは話し合いをして、スケジュールの調整を行う。このように決められるため、基本的に、変更は不可となる。また、休みは、アメリカ中の人々が休みを取り、社会全体で、仕事がスローになっている夏に取ることが好ましいとされる。

バケーションが10か月以上も前から決まっているので、人々はそれにあわせて仕事を調整し、10日間オフィスにいなくても、“火の車”にならないように準備を行っていく。また、バケーション期間中だからと言って、仕事を忘れることはできない。1日に1回はオフィスに連絡をとり、急用があるときは、バケーション先で仕事を行う。これを嫌がる人はいない。なぜなら、彼らの意識においては、仕事は自分のために行っているのであり、会社のために行っているわけではないからだ

 

人権を守る厳しい労働局の目

複合多民族国家が抱える最大の問題は人種差別。力を持った多勢派が少数派を苦しめる。この状況を助けられるものは法律をおいて他にない。人種差別との戦いがくり広げられた1960年代から1980年代を通し、アメリカは極度の訴訟社会となって行く。

企業は社員から訴えられないように、法で決められていることは100%順守する。また、労働局も、会社が社員の権利を守っているか監視している。労働時間は守られているか。残業代は支払われているか。有給休暇はきちんと消化されているかなどの調査が抜き打ちで行われ、一点でも守られていないことが発覚すれば、大きな罰則が課せられる。

だから、有給休暇は、すべて消化してもらわないと会社が困ることになる。何らかの理由で、消化していないスタッフがいれば、お金を払って有給休暇を買い上げることまで行う。それゆえ、社員は「会社に迷惑をかけないように、有給休暇は必ず消化してください」と言われることになる。

また、勤務時間内で処理できない量の仕事を課せられた社員がいながら、「残業をしてはいけない日」などを作り、社員がオフィス外で仕事をしなければならない状況が生まれるとしたら、それは許されない。筋の通らない行いは、裁判では勝てず、大きな罰則を課せられることになる。

このような厳格な制度に守られているアメリカのサラリーマンは恵まれていると言えるだろう。さらに、仕事を短時間で終わらせながら、高い給与を獲得できるシステムもある。

 

短時間労働を可能にするシステム

アメリカの組織は、少数精鋭部隊を造りだすことに力を入れる。例えば、一流大型ホテルを比べると、ニューヨークのホテルは東京のホテルの7割程度の社員数で運営を行っていることがわかる。3割も少なければ、一人あたりの給与は高くなる。また、日本のホテルの生産性は、アメリカのホテルの生産性の4割にも満たないという数字もある。この2つが合わさり、アメリカのホテルマンの給与は高くなる。では、なぜ、高い生産性が可能なのだろうか。

アメリカの組織では、一つの仕事を一人に任せることで、話し合いに使う時間を省く。それが、各自、全速力で走ることを可能にしている。また、その人物がどれだけ優れているかを測るシステムも用意されている。「あなたの仕事はこれだけです。これを自分の判断で行い、ゴールに到達しなさい」というジョブ・ディスクリプションとノルマが与えられる。

複数で行えば、誰がどれだけ、その仕事に貢献したのかわからなくなる。また、意見の衝突がでて動きが遅くなる。だから、一人の判断に任せ、その結果に基づき、ゴールが決められていく。さらに、ゴールには、出来高にあわせて給与額が膨らむというインセンティブもついている。ゴールを超えた仕事をこなせる者には、それだけ多くの給与が与えられる。これが、日本で言われる“ボーナス”の代わりとなり、ゴールを超えられない者に特別賞与はない。

 

高収益を生み出すマネージャーの働き方

このような環境で働く者はマネージャーのポジションにいるため、どれだけ長く働こうとも残業代はつかない。また、誰に頼ることなく、自分ですべての仕事をこなすため、各自、自分専用の電話番号を持ち、顧客から直接電話を受ける。電話に出られないときは、留守電にメッセージを残してもらうように、テープで案内を回す。それゆえ、残業代を得られる立場にいる秘書やアシスタントの数は極端に少なく、時間外に働く機会もない。残業代のように、額がよめない経費を用意することなど許されないので、残業代が発生しない体制になっている

マネージャーは個室で働くため、オフィスにいることさえ、覗かないとわからない。誰に邪魔されることなく、自分なりの時間配分で仕事に没頭できる。ただし、上司の仕事には部下の働きぶりを監視することが含まれているので、仕事ぶりには目を光らせている。いつも遅くまで仕事をしているにもかかわらず、ノルマに到達できないとなれば、“能力不足”という判断が下され、レイオフされることになる。

 

最高のコンディションを維持する努力

こうした日々の労働の中で、会社から要求されることは、「ベストコンデイションを維持し、ベストな結果を出すこと」。

科学的な見地からすると、人間が1日に効率よく働ける時間は長くない。だから8時間を基準とし、その時間内に全力を尽くすことが求められる。また睡眠も8時間取ることが奨励される。それに従い、夜の接待はなく、帰りがけに飲みに行くこともせず、ひたすら早く帰宅し、十分な睡眠時間を確保する。

また、体調を整えるため、週に3回以上、20分以上の運動を行うことも奨励される。さらには、日々のプレッシャーを軽減するため、年に1回から2回は長期のバケーションを取ることが勧められる。強い自己管理能力を保持し、日々8時間、集中力を切らすことなく力を発揮できることが、アメリカ企業で成功する者には必要とされることとなる。

 

アメリカに学ぶ転職活動の心得

会社で費やす時間は、人生で最も長い時間。それゆえ、会社での時間が充実していなければ、人生は惨めなものになる。会社は、自分を向上させながら夢を追うための場所にする、というのがアメリカ人の考え方。

昨今、大手企業でも、外資系企業に買収される事例が多く起きている。その根底にあるものは低生産性による業績の悪化。もはや日本の伝統的運営方針では、他国の企業と競争できない時代となった。言うまでもなく、今の日本企業に最も必要とされることは生産性の向上を図ること。生産性をあげられない企業の未来は暗い。

会社選びをする際は、その会社が生産性をあげるために、どのような方針をたてているかを調べることが大切。そこに、その会社の未来が反映されている。正しい方針に基づいて動く企業は発展していく。また、アメリカの会社に通じる“社員の能力を最大限に引き出す仕組み”を導入している会社であれば、そこでの日々は己の能力を伸ばし、未来を切り開く糧とすることが可能となるだろう。

次回は、アメリカ企業で成功している人々が使う処世術を紹介したい。

プロフィール

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ケニー・奥谷(ケニー・おくたに)

インターナショナル・ホスピタリティー・スペシャリスト

経歴・実績

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ・アジア地区セールスオフィスに入社。

1989年からシンガポールのウエスティン、1991年からサイパンのハイアット、そして1994年から2005年まで世界屈指の名門ホテル、NYのプラザホテルにてアジア地区営業部長を務めた。2001年EB1(Person of Extraordinary Ability)カテゴリーに認定され永住権を取得。

2005年プラザホテルの閉館を機にホテル勤務に終止符を打ち、NYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動を開始。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。

著書に「世界最高のホテル・プラザでの10年間」、「海外旅行が変わるホテルの常識」、「サービス発展途上国日本」、「なぜお客様は神様では一流と呼ばれないのか」、「超一流の働き方」などがある。

運営サイト

アメリカ社会で起きている就労実態

第1回 アメリカ社会におけるレイオフと再就職
午前10時にオフィスに戻ると、泣いている同僚がいた。「どうした」と尋ねたら、「レイオフにあったの。今日で、みんなとお別れよ」という。こんなことが、私が働いていたニューヨークの職場ではよく起きた。

第2回 短時間労働で高給を可能にするシステム
アメリカのサラリーマンの一般的な生活は18時前にはオフィスを出て帰宅し夕食を摂る。そして早めに床につき6〜8時間の睡眠をとる。多くの日本人に、「なぜこのような生活が可能なんだ?」と言われるかもしれない。

第3回 アメリカ社会で成功する人の処世術
アメリカで育った人の多くはとても自分勝手な性格をしている。何よりも自分が優先。自分の意に反した決まりは守らない。という態度で生きている。それゆえ、人と人との衝突も多く、世の中は訴訟社会にならざるを得ない。

第4回 レイオフにあったときの対処法
レイオフは突然言い渡される。大概、朝の10時前に呼び出され、「あなたの仕事は今日で最後になります。5時に荷物をまとめて持って帰ってください」と告げられる。このような調子なので、誰もがショックを受ける。

第5回 社内ハラスメントを撲滅させる力
「そこをなんとか」という依頼が許される日本の社会。それとは正反対に、アメリカの社会では、「できることと、できないこと」、「していいことと、してはいけないこと」の白黒を明確にさせるから、「そこをなんとか」はない。

第6回 適材適所に基づいた就活しかないアメリカ社会
アメリカの社会を形成した最も大きな要素は差別との戦いだった、と言っても過言ではない。「差別をする人々に負けられない!」という強い心が、アメリカの競争社会を作り上げる大きな原動力のひとつになってきた。

第7回 働きながら技能資格を追う人々
アメリカ人に年齢を聞いてはいけない。それなりの仲ならよいが、そうでない場合は、二度と口をきいてもらえなくなるかもしれない。学生時代に、アメリカに暮らす友人とデイスコに遊びに行っときのこと・・・

第8回 エグゼクティブの面接方法
アメリカの社会でも、ヘッドハンターから声がかかったからと言って、面接なしに、仕事を得られるわけではない。ヘッドハンターは紹介者に過ぎず、企業はヘッドハンターの情報に間違いがないかを面接で確認する。

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